どんなに古い仏像や由緒ある建造物が残されていても、その中に魂が宿っていなければただの美術品や文化財でしかない。要は寺を守る人々の心次第なのだと、そんな気持ちを抱いて、私たち夫婦は新たにお寺めぐりを始め、その結果出来上がったのがこの本であります。
　物質文明のめまぐるしい発展と引き換えに、人間の精神から次第に何かが欠落してきているのではないかと思える現代、そんな今だからこそ、寺院は、病める人々に一時の安らぎを与えてくれる機能はもちろんのこと、さらに積極的に働きかけ、人々を高みへと導く場所であって欲しい……。そんな、お寺あるいは僧侶の方々への希望も込めて、この本を書き上げたつもりです。

（「はじめに」より）